ゴーヤは独特の植物で、一つの植株から雄性の花(オシベを持つ)と雌性の花(メシベを持つ)がそれぞれ独立して開花します。
果実を育てるためには、雄花からの花粉が雌花のメシベへと運ばれ、受粉する必要があります。
ところが、ゴーヤを育てている際には、雄花は頻繁に見られるものの、雌花はそれほど多くないことが分かることがあります。この理由は何なのでしょうか?
雌花が咲かない一方で雄花ばかり咲く理由
ゴーヤの栽培中、雄花が顕著に多く、雌花が著しく少ない傾向にあることが認められます。
雌花と雄花の比率は、大体雌花1に対し雄花が10から20程度となっています。
雌花の花があまり咲かないのは、ゴーヤが適切な成長段階において適切な数の雌花を備えるためです。
7月頃、花が開始しゴーヤがまだ十分に成長していない初期段階では、主に雄花ばかりが開花します。
果実は雌花から形成されるため、雌花が多く咲くと果実が過剰になり、栄養が分散しゴーヤの成長全体が制限される可能性があります。
8月から9月にかけてゴーヤが成長するにつれ、雌花の開花数が増加し、果実が形成され始めます。
しかし、この時期でも雌花が多く咲くと、果実は小さくなり、最悪の場合、栄養不足で果実が育たず枯れることもあります。
両性花では、通常メシベは1本だけですが、オシベは多数存在します。
メシベに対しオシベの数が相対的に多い例として、
キキョウやアサガオではオシベが5本、ユリやナノハナでは6本、ウメやモモでは約10本、ソメイヨシノでは約30本あります。
このように、両性花におけるオシベの数がメシベに比べて多いのは、ゴーヤの雄花が雌花に比べて多い事例と同様です。
オシベが多い理由は、その先端で花粉が形成され、できるだけ多くの花粉を生産するためです。
花粉の移送を虫に依存する虫媒花は、虫の動向が不確かなため、多くの花粉を生成しメシベの受粉確率を上げようとします。
ゴーヤにおいても、雄花が多く存在するのは、豊富な花粉を通じて雌花の受粉確率を高めるためです。
雄花が多いほど、雌花への花粉の輸送確率は上がります。
雄花には多数のオシベが含まれていますが、受粉の確率をさらに高めるために雄花の数も増やしています。
風による花粉の移送を頼む風媒花の植物、例えばスギやヒノキも、風の向きがわからないので、多量の花粉を生成します。
ゴーヤの雌花と雄花の識別法
ゴーヤの雌花を見分ける一つの方法は、受粉が始まる前に花の基部近くに小さなキュウリの形をした膨らみが見られることです。
この部分は緑色をしています。↓
一方、雄花は中心部が黄色く、外見から容易に識別できます。↓
また、ゴーヤの雄花は短命であるという特徴があります。
開花して間もなくして落下することが多いです。
雌花と雄花に分かれている理由
では、ゴーヤに雌花と雄花が存在するのは何故でしょうか?
植物界において、同一個体が雌花と雄花の両方を持つ現象を雌雄同株と称します。
この特徴は、ゴーヤを含むウリ科の植物において一般的であり、キュウリ、カボチャ、スイカ等もすべて雌雄同株の特性を有しています。
雄花はオシベを有し、その主な機能は花粉の生成に限られます。
一方で、雌花はメシベを備えており、雄花からの花粉が到達することで種子が形成され、結実します。
従って、ゴーヤの実は雌花でのみ形成されます。
オシベとメシベの両方を持つ花は両性花と呼ばれ、このタイプの植物では、同一花内での自家受粉が比較的簡単に行われます。
しかしながら、多くの種子植物では、自家受粉は望まれていません。
自家受粉により生じた種子は遺伝的多様性を欠くことになり、
その結果、環境変化に対する種の脆弱性が高まるリスクがあります。
【雄花と雌花の仕組みについてはこちら↓】
まとめ
初期段階でゴーヤは、雌花よりも雄花ばかりが豊富に咲きます。
これは、ゴーヤがまだ十分に成長していないためです。
果実は雌花から成長するため、雌花が過剰に開花すると、結果として多くの果実が形成され、栄養が散らばり、ゴーヤの全体的な成長に影響を及ぼすことになります。
成長が進むにつれて、雌花の開花数は自然と増加し、果実がつくようになります。
しかし、この時期にも雌花がたくさん咲くと、果実は小さく成長し、最悪の場合、栄養不足により果実が成熟せずに枯れることもあります。
雄花が豊富に存在する理由は、花粉が雌花に効率良く運ばれ、受粉を促進するためです。
以上の理由から、雌花と雄花の比率は一般的に雌花1に対して雄花が10から20程度とされます。
従って、雌花の開花が少なく、雄花ばかりが開花する状況は、ゴーヤにとって決して不利な条件ではありません。